犬の心臓病
column
人だけじゃない!ワンちゃんの弁膜症
ドッグランで走り回ったり、お散歩のときに猛ダッシュしたり…ワンちゃんにはいつまでも元気に過ごしてほしいものです。
私たち人間が年齢を重ねることで、体のあちこちにトラブルが起こるように、ワンちゃんでも関節や臓器にトラブルが出てきます。
そのトラブルが起きる臓器の中に、心臓も含まれることご存じでしょうか?
今回はそんな心臓のトラブル「弁膜症」についてお話ししていきます。
どんな病気?心臓弁膜症
「ちょっとした運動で息切れや疲れやすさを感じる」CMで耳にしたことありませんか?
人間ではこのような症状が出たら、心臓弁膜症が疑われるため、検診やお医者さんへの相談を勧められると思います。
でもこの病気、人間だけではなくワンちゃんにも起こりうる病気なのです。
でも弁膜症って聞いただけでは「?」ですよね。まずは心臓弁膜症のお話からしていきますね。
弁膜症という名前に入っている通り、心臓に存在する「弁」がこの病気に大きく関わっています。
心臓は4つの弁が存在していて、以下の部分に存在しています。
- 三尖弁:右心房と右心室の間に存在する弁
- 肺動脈便:右心室と肺動脈の境に存在する弁
- 僧帽弁:左心房と左心室も間にある弁
- 大動脈弁:左心室と大動脈の境に存在する弁
心臓では絶えず血液が流れていて、血液を全身や肺へ送っています。それぞれの弁が閉じたり開いたりすることで、逆流せずに一定の方向へ流れていきます。
弁膜症は、そんな弁にトラブルが起きて開閉ができなくなり、血液の流れをコントロールできなくなる病気です。
疲れやすいのはなんで?
運動した後にゼィゼィ言うようになった。
少し歩いたら疲れてその場で立ち止まってしまう。
心臓の弁の不調で、ワンちゃんにこのような症状が出るのはなぜでしょうか?
例えば左心房と左心室間にある「僧帽弁」のトラブル。ここはワンちゃんの心臓の弁の中で、最もトラブルが起きやすい場所だとされています。
肺から左心房、僧帽弁を経て左心室から大動脈へ運ばれた血液は全身へと送り出されますが、僧帽弁の開閉がうまくいかなくなると、左心室・左心房の間で血液が逆流し、肺まで戻されてしまいます。
肺に戻された血液からは、水分が滲みだして少しずつ肺に溜まっていきます。肺は酸素を取り込む場所なので、水が溜まってしまうと取り込む酸素の量が減ってしまいます。
そのため、少し動いただけでも疲れたり、息切れするようになってしまうのです。
また、左心房・左心室間で逆流が起こることで、全身へ送り出せる血液の量も減ります。
それでも心臓は全身へ送り出す血液の量を一定にしようと頑張るので、足りない分は心臓をより多く収縮させて補おうとします。
そのため、心臓の音も「ドキドキ」ではなく「ドッドッドッ」と大忙し!心拍数が健康なワンちゃんより多くなってしまうことに。
症状が出ていないうちに。
この病気の怖いところは、じわじわと進行していくところです。先ほどお話しした僧帽弁のトラブルでは、症状が出ていて病院で診てもらうと「肺に水が溜まりまくり、即入院!」ということも珍しくありません。
また、気づかないまま心不全としてどんどん病態が悪化していき、突然死んでしまうということも。
大切なワンちゃんをそんな突然死から救うには、日ごろから健康検査などでしっかりとワンちゃんの健康状態を把握しておくことが大切です。
「症状は出ていない、でも心臓に小さなトラブルがある」といった段階でしっかりと治療をしていけば、症状の進行を抑え、ワンちゃんももっと長生きできることでしょう。
当院では、心臓の状態が分かる各種検査を行っております。年齢が気になるワンちゃんや、症状が気になるワンちゃん、一度心臓のチェックをしてみませんか?