
犬の心臓病
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見過ごすと大変なことに!僧帽弁閉鎖不全症
ワンちゃんが高齢になってくると、様々な病気に見舞われ亡くなることもあります。そんな病気に「心臓病」があります。
亡くなる原因の上位にランクインするともいわれる心臓病ですが、最も多い「僧帽弁閉鎖不全症」をご存じでしょうか?
心臓病?僧帽弁?どんな症状が出るの?とハテナまみれだと思います。
今回はそんなハテナな僧帽弁閉鎖不全症についてお話ししていきます。
僧帽弁って?

僧帽弁ってなに?そう思う人も中にはいるでしょう。
僧帽弁は心臓の中についている「弁」のこと。心臓には4つの弁がついていて、右心房と右心室の間についている弁を三尖弁、右心室と肺動脈の間についている弁を肺動脈弁、左心房・左心室の間についている弁を僧帽弁、左心室と大動脈の間についている弁を大動脈弁といいます。
心臓の働きは、ギュッと縮んで血液を送り出すことですが、弁はそれに合わせて閉じたり開いたりすることで血液の逆流を防ぎ、心臓の中では血液の流れが常に一定の方向に保たれています。
ちなみに、僧帽弁がついている左心は、肺から流れてきた血液を全身へ送り出すというのが通常時の流れです。ところが、僧帽弁閉鎖不全症を発症するとこの血流がおかしなことに…。
弁が閉じなくなると…

僧帽弁閉鎖不全症は、先ほどお話しした「僧帽弁」の動きをコントロールできなくなり、血液が逆流を起こしてしまう病気です。コントロールできない…どういうことなのでしょう?
僧帽弁には腱索という糸みたいなものを通じて筋肉と繋がっています。
筋肉と繋がっていることで開閉をコントロールできるのですが、弁そのものが傷ついたり腱索や筋肉がダメージを受けたりすると、それができなくなります。
弁が開きっぱなしで血液は逆流し放題!ひどいときには血流に弁が揺られている…なんてことも。
どうしてこんなことが起きるのでしょうか?
意外な原因と症状

僧帽弁閉鎖不全は様々な要素が原因として考えられていますが、最も身近なものが「歯周病」です。
歯周病によって弱った歯茎や出血している部分から菌が入り込み、心臓まで飛んでいきます。心臓にたどり着いた菌は、弁や腱索、筋肉にくっつきます。
菌がたくさんくっつくと薄かった弁を分厚くしてしまいキレイに閉じなくなるし、腱索や筋肉は千切れたり傷ついたりすることで弁を閉じることができなくなってしまいます。
こうして心臓がギュッと縮んだときに、弁が閉まらずに血液が逆流することに。
血液は左心室から大動脈を経て全身へ送り出されるのですが、逆流が起こることで10送り出せていた血液が6まで減ってしまうといった具合に1度の心臓の収縮で送り出せる血液の量が減ります。
すると、心臓は足りない分を補うために収縮の回数を増やします。そのため、僧帽弁閉鎖不全症のワンちゃんでは心拍数が多くなります。
これだけではありません。普段は左心房から左心室、大動脈を経て全身へ血液が送り出されるのですが、逆流が起こると左心室から左心房へ血液が戻ってしまい、左心房が水風船のように膨らんでいきます。
そのまま膨らみ続けると、心臓の近所にある気管を押しのけてしまい、咳が出るように…。
その状態がずっと続くと、血液が肺にまで逆流して肺に水が溜まり出し、呼吸困難になることもあります。
大事なワンちゃんを守るには
僧帽弁閉鎖不全症をはじめ、心臓病の初期はワンちゃんに何の症状も出ていないことが多く、症状が出始めて病院で検査すると、病気が悪化していることがあります。中には薬が手放せないような状態になる子もいます。
できることなら症状がないうちに健康検査などで心臓の検査をしておくことをおススメします。
初期の段階で心臓病が見つかれば、お薬だけでなく食事やサプリで管理することができます。検査してみようかな…と思ったら当院へぜひお越しください。
