<心臓病治療の特徴>
心臓喘息(咳)のコントロール
が充実

心不全性の2つの「咳」について

犬

僧帽弁閉鎖不全症(心臓病)には、2種類の「咳」があります。
それぞれ異なる原因で「咳」が出るため、それぞれの原因にあった治療を行わなければ、この「咳」は抑えることはできないだけでなく、どんどん悪化していきます。

心臓病には2つの「痰の絡んだような咳」があります。
1つは「心臓喘息」、もう1つが「肺水腫」です。


01
「心臓喘息」について

  • 正常な心臓正常な心臓
  • 心臓喘息の心臓心臓喘息の心臓

左心房の拡張によって「心臓喘息」が起こる

ステージB2以上になると、僧帽弁閉鎖不全のために心臓が大きくなり、気管や気管支を刺激することで特有の乾いた咳が誘発されます。

左心房が腫れて気管を刺激

通常は「ドッキン・ドッキン」と心臓の鼓動ごとに左心房から左心室へ血液が流れるのですが、逆流防止弁である僧帽弁が綺麗に閉まらない僧帽弁閉鎖症では、心臓の鼓動ごとに、左心室から左心房へ血液の逆流が起こっています。
逆流した血液は左心房にたまり、溜まった血液によって左心房はどんどん膨らんで大きくなり、気管や気管支を刺激したり・圧迫したりするようになります。この圧迫によって、気管や気管支は刺激され、特有の乾いた咳が出るようになります。主に興奮時や冷たい水を飲んだ時、冷たい空気を吸った時に起こります。


血圧コントロールで
「心臓喘息」を抑えることが大切

咳が認められれば、「ネオフィリン」などの呼吸器治療薬を使用するだけでなく、大きくなっている左心房を小さくし柔らかくするために降圧剤「アムロジピン」を使用すると咳が治ることが多いです。
また、喘息性の咳がひどいからといって、ステロイド剤を使用すると返って、心不全が進行することがあるので使用は極力控えます。

02
「肺水腫」について

血液の逆流が「肺水腫」を起こす

  • 正常な心臓と肺
    正常な心臓と肺
  • 心臓喘息の心臓と肺水腫の肺
    心臓喘息の心臓と肺水腫の肺

1. 左心房への血液の逆流が進み、肺静脈や肺へ血液が逆流します。

心臓喘息を治療せずにそのまま放置すると、更に僧帽弁の機能が弱まり、一層左心房への血液の逆流が進みます。こうなると左心房は大きく膨張するだけでなく、肺静脈や肺へ血液が逆流し始めます。

2. 肺の中に血液が逆流し、「肺水腫」となります。

肺の中に血液の逆流が起きれば、肺の中に血液が漏れ出し「肺水腫」という状態になります。
「肺水腫」になると肺の中が血液で満たされるので、あたかも水の中に落ちて溺れた状態になります。血液で溺れた状態になると、呼吸が速くなり、舌の色がチアノーゼを起こし、最終的には自分の血液で溺れた状態になって溺死します。早急な治療が必要です。


「肺水腫」は急に発症してしまう

僧帽弁は腱索と呼ばれる糸によって左心室に固定されています。この腱索があることによって僧帽弁は綺麗に弁を閉じることができ、血液の逆流を防止しています。もし、あなたの愛犬が歯石がひどく付着していて、大量の歯周病菌が毎日毎日心臓に入ってくれば、容易に僧帽弁の弁の先(弁尖)に歯周病菌は感染するでしょう。感染すれば、炎症が起き弁が分厚くなり、過度の重みが生じます。

僧帽弁が分厚くなって、弁尖に過度の重みがある時に、激しい運動など心臓の鼓動が速くなることが起きれば、腱索に過剰な力が加わります。この過剰な力によって、突如、腱索は断裂し、断裂よって僧帽弁は全く機能しなくなります。

弁が機能不全に陥ると膨大な量の血液が逆流を起こし、左心房だけでなく、その奥の肺静脈まで津波のように膨大な血液が押し寄せます。その結果、肺の中は逆流した血液で溢れだし「肺水腫」が起きます。

「肺水腫」は急に発症するので
一刻を争う治療が必要となる!

一番問題なのは、この一連のトラブルが、あっという間に起こることです。「昨日まで調子が良かったのに」「朝まで調子が良かったのに」と言うぐらい、本当にビックリするぐらい急に呼吸が悪くなって、ハァハァと息も絶え絶えな「あえぎ呼吸」が起こります。
急変した場合は、一刻を争う治療が必要となります。
すぐに病院に来院して下さい。

「肺水腫」の治療について

  1. 体に酸素を供給

    肺水腫を起こしている肺は、自分の血液で溺れている状態でうまく呼吸ができていない状態なので、すぐに高濃度の酸素室に入って、体に酸素を供給します。

  2. 血管確保後、利尿剤を投与

    次に静脈内に留置針を留置し血管を確保します。血管確保後、利尿剤であるラシックスを投与するとともに、ニトログリセリンテープを皮膚に貼ります。 最後に血管拡張剤であるアプレゾリンを投与します

  3. 様子を確認し必要であれば、血圧降下剤の静脈内点滴を開始します。

    30分経っても、呼吸が正常に戻らならなければ、血圧降下剤であるニトロプルシドナトリウムの静脈内点滴を開始します。
    30分おきに効果が出るまで増量しながら点滴を続けます。

これらの一連の治療は、高度な治療技術が必要となるため、
入院しながら治療を行います。

「肺水腫」治療後(継続期)

肺水腫が治り、呼吸が落ち着けば、退院して内服薬の治療に変更します。
自宅ではトリプル・セラピーを基本とした治療を始めます。強心剤である「ピモペンダン」や血管拡張剤である「アムロジピン」、利尿剤であるトラセミドやフロセミドを投薬します。 肺水腫の程度によっては利尿剤であるスピロノラクトンやヒドロクロロチアジドを追加投与することがあります。

ステージB2、C、Dの心臓病は
「心臓喘息」や「肺水腫」が起こりやすい心臓。
そんな心臓だからこそ、ごとふの「心臓に優しい治療」が重要。

「心臓喘息」には「血圧コントロール」
「肺水腫」には「一刻を争う高度な医療」
ごとふの治療を行えば、みんな元気でイキイキ!

「肺水腫」が起きた時のための一刻を争う自宅治療

自宅で急に「肺水腫」が起きて、息も絶え絶えに。こんな時に限って病院は休み。一刻の猶予もありません。
こんな時には自宅で救急治療をする必要があります。治療方法は病院で詳細をお伝えします。
もし、忘れた時のために手順動画を載せておきます。