肺水腫を予知?!心臓病とその検査(犬の心臓病)|ごとふ動物病院(福岡)

犬の心臓病
column

2020.12.07

肺水腫を予知?!心臓病とその検査


ワンちゃんを呼吸困難に陥らせたり、時には命を奪ったりすることもある『肺水腫』。

経験したことのある飼い主さんでは『急になるもの』と思われがちですが、心臓病が悪化して起こる症状の一つ。

小さな症状が重なって『肺水腫』という大きな症状が出ると言っても過言ではありません。

そんな『突然』というイメージの強い肺水腫ですが、ワンちゃんを苦しめる症状が出る前に何とかしてあげたいですよね。

実は検査を受けることで『もうすぐ肺水腫になるかも…』と予想できることをご存知でしょうか?

心臓病を持っているワンちゃんなら定期的に受けてほしいこの検査。

今回は肺水腫を防ぐための検査についてお話ししていきます。

 

速度をチェック!『左室機能検査』


その検査というのはエコーを用いた『左室機能検査』。

ワンちゃんの心臓病で異常が出ることが多いのは左側で、僧帽弁や左心房、左心室の動きにトラブルが出ます。

心臓の働きは『血液を送り出す』こと。左心房・左心室がきちんと収縮&拡張して血液を送り出せているか、僧帽弁の厚み・動きは正常かをエコーを使ってチェックしていきます。

エコーと聞くと「白黒のモヤモヤした画像をもらったことがある」という飼い主さんもいると思いますが、心臓の断面をモニターに表示して、前述のトラブルが起きていないか確認する方法と、今回お話しする『左心室へ流れ込む血液の速度』を確認する方法とあります。

 

血液の速度を測ってどうなるの??…と思いますよね。実はこの速度の増減が肺水腫の危険をキャッチするポイントなのです。

 

血液の流れ

僧帽弁が開いて左心房から左心室へ血液が流れるとき、1度ですべての血液が流れるのではなく、第1波と第2波の2度にわたって流れます。僧帽弁が開いたあと、以下2つの手順を踏みます。

①左心室が拡がって、左心房から血液を呼び込む(第1波)
②第1波のあと、左心房がギュッと縮まって左心室へ血液を送り出す(第2波)


第1波で送られた血液の速度を波形にしたものをE波、第2波で送られた血液の速度を波形にしたものをA波と呼びます。

左室機能検査では、心臓の動きと併せてこの『E波』とE波とA波の比率である『E/A』を見ていきます。

健康なワンちゃんではE波は80cm/秒ほどの速度があり、E/Aの比率は1~1.5だと言われています。

心臓病が発生すると、それぞれの速度・比率に大きな変化が現れます。

 

左心室が『拡がらない』

心臓病…特にワンちゃんで多いのは僧帽弁閉鎖不全症で、僧帽弁がきれいに閉じなくなることでさまざまなトラブルを引き起こします。

その最たるものは『血液の逆流』です。肺→左心房→左心室→全身へと流れていた血液が、左心室と左心房の間で逆流するようになります。

血液が逆流すると、今まで全身へ送っていた分の血液を1回の心臓の動きで送り出せなくなるため、心臓は『ドキンドキン』の回数を増やすことで補おうとします。


結果心臓が疲れて左心室が大きく拡がらなくなり、左心房から血液を呼び込むパワーも低下します。

このとき、E波は正常値よりも下がり、E/Aの比率も1を下回るようになります。

 

左心房に『圧がかかる』

血液の逆流が続くと、左心房で血液が渋滞し始めます。

 

肺からやってきた血液・左心室から逆流してきた血液が合流して、左心房の壁に圧をかけて押し広げていき左心房がどんどん大きく膨らんでいくようになり(心臓肥大)、さらに症状が進むと、左心房ではなく肺で血液が渋滞して肺水腫を引き起こします


この状態のとき、第1波で左心室が血液を呼び込むパワーは弱まっていても、左心室が拡がった瞬間、左心房の圧によって血液が勢い良く流れ込むので、E波はぐーんと高くなりE/Aの比率も1.5~2を示すようになります。

 

つまり、E波とE/Aの比率が高くなればなるほど、『左心房に圧がかかっている』『僧帽弁閉鎖不全症が重症』だということになります。

E波が140cm/秒以上、E/Aの比率が2以上を示すと、2週間以内に肺水腫を起こすことが多く、検査を受けた時点でお薬を変更したり調整したりすることで、その発生を防ぐことができます。

 

定期的な検査を


心臓病と診断されたあと、おうちでお薬を飲ませるだけでなく定期的に通院していますか?

ワンちゃんの心臓は、症状を隠すのがとっても上手。

今回お話しした『左心房に圧がかかる』状態は、心臓喘息を引き起こす原因になります。

『最近咳が増えたような気がする』『咳が止まらないことが多くなった』というときこそ病院へ行ってエコー検査を受けることで、ワンちゃんに飲ませているお薬を調整して肺水腫を防ぐことができます。

ワンちゃんが苦しむ前に、検査を受けに病院へ行きませんか?

 

当院では心臓のエコーはもちろん、今回お話した左室機能検査を施しております。

また心臓病のカウンセリングも行っておりますので、病気について・治療について不安なこと分からないこともご説明いたします。

ワンちゃんの心臓病、お薬をもらうだけの通院になっていませんか?

しばらく来院していないワンちゃんでも、初めてのワンちゃんでも大丈夫!

心臓病をこじらせて、肺水腫でワンちゃんが苦しむ前に一度検査を受けてみませんか?





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