犬の歯石取り
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つまんでポイ?鉗子を使った歯石除去
歯ブラシやスケーラーなど、ワンちゃんのお口のケア用品がショップでも増えてきています。
このようなグッズは、ワンちゃんのお口の状況や、飼い主さんの使いやすさなどを考えて使っていくと、歯石取りしたピッカピカのお口の状態を長く保つことができます。
そんなグッズの中に、鉗子(カンシ)と呼ばれる道具があります。歯科用ペンチとしても売られているこのグッズ、一体何をする道具なのでしょうか?
今回は『鉗子』についてお話していきます。
『鉗子』って?
『鉗子』って聞き慣れないですよね。診察では使う機会多くはないですが、病院では大活躍の器具です。手術で止血したり、組織を摘まんで持ち上げたりと用途もさまざま。
飼い主さんとは接点の低いグッズですが、ペットの通販雑誌などでは、ワンちゃんの耳毛抜き用の鉗子が掲載されていることもあります。
そんな鉗子ですが、摘まむ・掴むだけではなく、歯石を挟んで割るという使い方をすることで、歯石除去のグッズとしても活躍するのです。
突然ですが、あなたのワンちゃんの歯石の付き具合はどうですか?
最近歯石取りをしたというワンちゃんから、生まれてこの方一度も歯石取りをしたことがないというワンちゃんまで歯石の付き具合にはばらつきがあると思います。
中でも歯の表面が全て歯石で覆われている場合や、歯と歯の境目が分からないくらい歯石が付着している場合では、この鉗子を使った『挟んで割る』という方法を、歯石取りの処置で実施することがあります。
どのように行われているのでしょう?
掴んで割る!鉗子の使い方
実際の歯石取りでは、超音波スケーラーを用いて歯石を除去していきますが、超音波スケーラーのパワーを以てしても、簡単に取れず時間がかってしまうケースがあります。
それが『分厚い歯石』。
薄く付着した歯石に比べ、分厚い歯石は超音波スケーラーのパワーが伝わりづらく、歯石を除去するのに時間が掛かってしまいます。
そんなとき使用するのが鉗子です。
まず、鉗子で分厚い歯石を掴みます。軽く力を入れて握ると歯石が割れるので、割れた破片を掴みなおして取り除きます。
これを繰り返し、歯の表面が見えるようになる程度歯石を取ったら、細かい部分はスケーラーで取り除いていきます。
このように、あらかじめ鉗子で歯石を取り除いておくことで時間を短縮することができ、ワンちゃんへの負担を減らすことができます。
ちなみに、歯石が薄く付着している場合や根元にしかついていない場合には、初めからスケーラーを使って除去していきます。
鉗子で除去することも可能ではありますが、鉗子で歯石を掴み損ねた際に歯の表面に傷が付いたり、最悪の場合、歯が割れる危険があるのです。
自宅では使える?
ハンドスケーラーと同様に、ネットやショップで見かける機会が増えてきた『鉗子』。もちろん自宅のケア用として販売されているものですが、ハンドスケーラーと同じく、自宅で使うにはちょっとハードルの高いケア用品。おすすめは…できません。
理由は前回の記事でお話ししたように、ワンちゃんの顔を動かさないようにコントロールしながら使用する器具だから。
鉗子はその形状から、使う際に力が入りやすいので、ワンちゃんの顔が動くような状態では歯石ではなく歯肉や歯の表面を傷つけて出血することもあります。
最悪の場合、歯が折れることも。
使い方を間違えると、ワンちゃんも痛い思いをするので『お口を触られると痛いことをされる』と思ってお口を触らせてくれなくなることだってあります。
鉗子を使って除去しようか迷うような歯石の付き具合なら、当院へ足を運んでみませんか?
歯石の原因となる歯周病菌のチェックを始め、歯石除去やちょっと特別な歯磨きなど必要に応じて実施しています。
鉗子に頼らなくてもいい、お口のケアを始めませんか?