犬の歯石取り
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食べるための歯?!奥歯に潜む危険
ワンちゃんの歯磨き、頑張っていますか?
『前歯を触ると嫌がる』とか『歯ブラシがうまく使えているか不安』など、飼い主さんの歯磨きのお悩みもそれぞれだと思います。
特に『奥歯』のケアが難しいと思っている方は多いのではないでしょうか?他の歯もそうですが、特に奥歯のケアは怠ると追々大変なことに・・・!
今回は『奥歯』についてのあれこれ、お話ししていきます。
ご飯を食べるのに必須!奥歯ケアの必要性
ワンちゃんがどの歯でご飯を噛んでいるかご存知ですか?なんとなくわかると思いますが『奥歯』ですね。奥歯で食べ物を噛み砕いて飲み込んでいるのです。
ワンちゃんの口の中には42本の歯が生えていますが、実は噛み砕くことに関係している歯は左右それぞれ2本ずつしかないと言われています。
少し難しい呼び方をすると上あごの『第四前臼歯』と下あごの『第一後臼歯』。この2本は切断歯と呼ばれ、『食べること』に関わる重要な歯なのです。
ワンちゃんが口を閉じた状態では、上あごの第四前臼歯が下あごの第一後臼歯に被さるように生えていることからも、この2本の歯が噛み合って食べ物を小さくしていることが分かると思います。
歯周病治療で来院されている患者さんには、この2本の歯は必ず残しましょうとお話をしています。
理由は簡単。抜けてしまうと、そこでご飯を噛むことができなくなるから。左右に1対ずつなので、片方で上下どちらかが抜けてしまうと、もう片方で時間をかけてご飯を食べなければいけません。
左右どちらも1本ずつ抜けると、カリカリのフードを食べるのが難しくなってきます。
大事な奥歯。でもリスキーな奥歯
そんな大事な奥歯ですが、歯磨きをしていても磨き残しが出てしまう場合が多いのもまた事実。
というのも、ワンちゃんの奥歯は見えにくい上、他の歯に比べて表面に丸みを帯びていて溝もあるため磨きにくいのです。
さらに先ほど話した通り、下あごの奥歯については口を開けてくれなければ、磨くのは難しいとされています。
歯垢が溜まって歯石になるお話を以前しましたが、奥歯の近くには唾液が流れ出る穴もあるため、歯垢が歯石へと変化しやすいというのもあると思います。
しかし、放っておくと歯周病の影響が顕著に出ます。
歯肉が溶けることはもちろんですが一番怖いのが、顔が腫れる『眼窩下膿瘍』。歯周病菌が上あごの歯の根元をどんどん溶かし、さらにトンネルを掘ることでトンネルの先に膿が溜まる状態です。
知らないうちに進行することが多いため、昨日まで普通だったのに今朝見たら顔が腫れている!と大慌てで来院される患者さんも少なくありません。
最悪の場合、抜歯しなければならないことも…。
絶対に守りたい歯がそこにある!
顔が腫れたり、歯そのものが揺れたりすると抜歯することもありますが、前述の通り『食べるための歯』なので、できるだけ抜かずに残してあげたいですよね?
そのためには『自宅ケア』!
ですが…実際は難易度の高い部分だと思うので、ちょっとしたお役立ちアイテムをご紹介します。時にはこのようなグッズを使って、無理なく続けていきましょう。
口角器
ワンちゃんの口角の皮膚を引っ張る道具。口角に引っ掛けて軽く持ち上げるようにして引っ張ると、奥歯が見えやすくなります。2人以上で自宅ケアをする場合の、補助器具としておすすめです。指サック型歯ブラシ
歯ブラシのハンドル部分が指サック状になっているもの。歯磨きシートを使うように、サック部分に指をはめてシャカシャカ磨くことができます。指サックと柄の部分がシリコンでできているものは、実用性に加えて安全性も◎。自宅で自分だけがワンちゃんのケアができる・・・という場合におすすめです。
応用編:タオル類
口を開けておくためのアイテム。巻き寿司のように棒状にしてワンちゃんに噛ませることで、上下奥歯の重なりが解消され下あごの奥歯が磨きやすくなります。ハンドタオルや布巾などでもOKです。ただし、下あごが歯周病で細くなっている場合は、骨折の危険があるのでやめておきましょう。
リスクがあるなら定期検診を。
奥歯は通常時見えにくく、ケアもしづらいので、放っておくと一気に症状が悪化することがあります。また、今まで歯磨きをしたことがなくすでに歯石が付いている場合は要注意!突然顔が腫れる日は、もうそこまで来ているかもしれません。
自宅のケアができているか不安、一度もお口のチェックをしたことがないという方は一度診察を受けてみませんか?
あなたとワンちゃんに合ったケアをスタッフからお話しさせていただきます。
ワンちゃんの大事な『食べるための歯』守ってあげませんか?