歯周病ケア中の事故について

2018.06.21

麻酔をしない歯周病ケアを始めて、15年がたちます。
この15年間に色々なクレームやトラブルがありました。
一時は本当にこの処置に疑問を持って、止めようかとも思いました。
でも、多くの飼い主さんに励まされて、今の処置スタイルになりました。

本当に改善・改善の毎日でした。
今はこの治療方法に自信と誇りを持っています。
本当に挫折をせずに、続けてきて良かったと思っています。

それでは、今までのトラブルとクレームについて包み隠さず報告します。

1.処置後1頭が死亡しています。
心不全の持病があり、心不全のお薬を飲んでいる状態で処置をしました。
処置後、心不全の徴候があらわれ、酸素吸入により調子が良くなったので帰宅しましたが、帰宅途中に心不全が悪化し、死に至りました。
(対策)
来院時の問診を強化し、心不全の疑いや内服薬を投与している子にはレントゲン等により心臓の評価をし、処置に不安がある場合には歯科処置(歯石取り)を中止することを厳格にしました。
(対策後)
その後、同様のトラブルはありません。

2.下顎骨折した子が1頭います。
麻酔をせずに歯科処置を実施中、下顎が折れました。本当に処置中は下顎が折れた事が気付かないぐらい痛がりませんでした。処置後に何かおかしいと思い、レントゲンで確認すると下顎の前3分の1で骨折していました。
(対策)
下顎の骨折が起こりそうなぐらい歯の歯周病が進行している場合、レントゲンを撮るようにしました。そこで、危険性がある場合には、処置をしないようにしました。(この場合麻酔の有無にかかわらず、処置中の事故の可能性は大きいため、どちらの方法においても処置を実施しておりません)
また、以前はお口を大きく開けて、歯の内側(舌側面)に歯石取りなどの歯科処置をしていましたが、現在はすべての子でお口を大きく開けずに歯の内側を処置する方法に変えました。
(対策後)
その後、どう良いのトラブルはありません。

3.股関節脱臼が1頭、習慣性膝蓋骨脱臼の悪化が3頭います。
当院の処置スタイルは横向けで処置をしますが、性格によっては処置中ワンちゃんが暴れたりします。処置中はその異変に気づくことはできないことが多く、処置後の歩様の異常の確認時に気づくことが多いです。
今までに、股関節脱臼が1頭、膝蓋骨内方脱臼の悪化が3頭います。
股関節脱臼の子は処置が終わって会計待ちの時に異常がわかりましたが、何故脱臼したのか、何故処置後すぐには歩様の異常が認められなかったのかは不明です。
習慣性膝蓋骨内方脱臼の子たちは、処置後の歩様検査で異常が認められました。すべて、痛み止めと安静で改善はしましたが、あってはならない事故です。
(対策)
それまでは、2人で処置をしていました。つまり、1人がスケーラーで処置をして、もう1人がワンちゃんが動かないように保定していました。このトラブルが起きた後からは、3人体制で処置をするようにしました。つまり、1人が処置をし、もう2人は1人が前肢を、もう1人が後ろ足を保定することにしました。
(対策後)
この保定に変えてから、このようなトラブルは全く無くなりました。

4.原因不明の後ろ足のトラブル1頭
麻酔をせずに右下の虫歯を処置しましたが、処置後後ろ足がしっかりと動かなくなりました。膝に痛みはあったものの椎間板ヘルニアなどの神経トラブルはありませんでした。他の病院でも検査をされましたが、原因は不明でした。抗生剤とステロイド剤で症状が改善したとお電話では聞きましたが、あれ以来来院されていませんので詳細は不明です。
(対策)
原因は不明なのでなかなか対策は立てづらいですが、2人体制の保定(3人体制での処置)で様子を見ていこうと思います。
(対策後)
今のところ、同様のトラブルは発生していません。

5.番外編
麻酔下歯石取り(麻酔をかけた歯石取り)後、1頭が死亡しています。
麻酔をして歯石取りを実施しました。処置は何の問題もなく処置が終了しました。お返しの時もお姉さんが迎えに来られた時も『ワンワン』と激しく吠えたぐらい元気でした。
次の日連絡があり、朝方死亡したという連絡でした。
何故死亡したのか全くわかりません。
(対策)
麻酔薬をプロポフオールから、アルファキサロンに変更しました。
(対策後)
歯周病治療のための全身麻酔をしての歯石取り処置は、この子が最後です。このトラブル以降は全身麻酔をしての歯石取りは全くしていません。
また、避妊手術等の麻酔導入薬をアルファキサロンに変えましたが、同様のトラブルは全くありません。

麻酔をしない歯石取りは一見安全そうに見えますが、15年で約3万頭弱の子の処置をさせていただきましたが、残念ながら、当院では5頭の処置後トラブルがあります。
本当に細心の注意を払って処置をしているのですが、それでも処置後トラブルをさせてしまいました。

経験のない・知識がない処置をしている方を見ると、「危ない!」注意してケアしてねといつも思っています。本当に難しい処置ですので処置を実施する方は、本当に気をつけてやって下さい。
トラブルが起きてからは、本当に辛い日が続きます。こんな忘れ物王の私が、すべてのトラブルを覚えているぐらいですから。

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